迷惑な入居者の放置は絶対NG!負の連鎖を回避する大家必見マニュアル

近隣トラブル

賃貸経営を行うオーナーにとって、迷惑な入居者が引き起こす数々の住民トラブルは悩みの種です。 あまりにも問題行動が多い入居者は周囲に悪影響を与えるため、オーナーはなるべく早く退去させたいと考えるでしょう。 日本の法律では賃借人の権利が強いといわれていますが、手順を踏み、必要な条件を満たせば強制退去させることも可能です。 今回は迷惑な入居者を強制退去させるための手順を徹底解説します。 健全な賃貸経営を続けていきたいオーナーは必見です。

1.強制退去が可能になる主な理由

オーナーが入居者を強制退去させるには、正当な理由が必要です。 老朽化した賃貸物件の解体・修繕、貸主が居住するためにその物件がどうしても必要になった等、やむを得ない理由に加え、入居者が契約書に定められた禁止事項を行っている場合などが正当な理由に該当します。 禁止事項に該当する行為は契約書で定めた内容次第ですが、一般的には次のような行為が該当するとされています。

1)家賃の長期滞納

家賃の長期滞納は、一般的には強制退去の対象です。 3カ月以上の滞納が長期滞納に該当し、オーナーから入居者本人への督促や保証人への通知を行っても支払われない場合には、強制退去を行える可能性が高くなります。

2)騒音によるトラブル

集合住宅における住人トラブルの代表格ともいえるのが、騒音トラブルです。 家の構造によっては、ある程度の生活音が隣家に届いてしまうのは仕方ありません。 しかし、周辺からクレームが寄せられるほどの騒音が発生している場合や、オーナーからの注意に全く従わない場合などは、強制退去を要求できる可能性があります。

3)悪臭によるトラブル

近年増加しているといわれているのが、悪臭による近隣トラブルです。 ゴミを捨てずに自宅にため込む、いわゆる「ゴミ屋敷」から発生する悪臭は、近隣の方からすればたまったものではないはず。 加えて、ゴミ屋敷の存在は、迷惑になるだけでなく犯罪や火災事故などの温床になるおそれがあります。 注意に従わずにゴミを処分しない場合、オーナーは物件の安全確保を理由に強制退去の要求を検討しましょう。

4)ペット禁止物件での無断飼育

ペット禁止物件での無断飼育は重大な契約違反であり、強制退去の理由になる可能性があります。 室内でのペット飼育は一般的に部屋の傷みやニオイ、鳴き声による騒音といった問題が発生します。 ペット飼育可の物件はそういった部屋の損耗を加味した家賃設定となっていますが、一般の賃貸物件はペットの影響を考えていません。 本来発生しない部屋の傷みが物件の価値低下や周辺住民の不満につながるため、オーナーは契約違反として強制退去を要求できるでしょう。

5)許可を取らない無断転貸

賃貸物件の無断転貸は、民法612条で禁止されている違法行為です。 原則として賃貸物件は契約者本人および申請された同居人のみが居住できる契約を結びます。 長期不在の間に知人を住まわせるといった転貸は契約違反となり、強制退去を行う理由となります。

6)定期借家契約の期間超過

定期借家契約は、オーナーと入居者の間で結ぶ賃貸借契約の有効期間をあらかじめ定めた契約です。 原則として契約更新はないため、例えば契約時に期間を2年と定めたのであれば入居者は必ず2年で退去しなければなりません。 契約期間を超過して居座る入居者に対して、オーナーは強制退去させる権利があります。

2.迷惑な入居者に対処しないデメリット

迷惑行為を行う入居者の存在は、オーナーにとって非常にやっかいです。 できれば関わりたくないと考える方も多いでしょうが、迷惑な入居者を放置してしまうと賃貸物件の運営に大きな悪影響が発生してしまいます。 以下のようなデメリットが本格化する前に、オーナーは迷惑な入居者に対する対応を行いましょう。

1)他の入居者が退去してしまう

一部の入居者が発生する騒音や悪臭は、周辺の入居者にとっては非常に迷惑です。 転貸によりオーナーが把握してない人物が住んでいる状態は、治安の面でも問題があるといえます。 安心して快適な生活を送れない環境が常態化してしまうと、他の住民は転居を検討し始めるかもしれません。 最終的には善良な入居者がいなくなり、迷惑な入居者だけが残るという結果も考えられます。

2)賃貸経営上のキャッシュフローが悪化する

長期間家賃を支払わない入居者がいると、本来得られるはずの家賃収入が無くなるため、オーナーは予定していた現金を得られなくなります。 金融機関からの借り入れたお金で賃貸物件を建てたような場合、毎月の返済分は家賃収入から行うように計画を立てます。 しかし長期家賃滞納者がいれば返済に充てる予定の現金が入ってこなくなるため、キャッシュフローが悪化し賃貸経営が苦しくなってしまいます。   迷惑行為により他の入居者の退去が相次いでしまうと、次の入居者が決まるまでの間の空室期間が生まれてしまいます。 その期間中は家賃収入を得られず、入居者募集のために新たな費用も発生するため、キャッシュフローの悪化は避けられないでしょう。

3.迷惑な入居者を強制退去させるための条件

賃貸契約を結んだ入居者は法的に非常に強い立場にあるため、オーナーから退去を申し出る場合には原則として正当な事由が必要とされています。 そのため迷惑行為を行う入居者も簡単に退去させるのは困難です。 しかし、悪質な行為に対する適切な対応を進めることで、強制退去を実現しやすくなります。 ここでは、悪質な入居者に備えるための準備と強制退去の手順をご紹介します。

1)退去を求めるための正当な事由とは

オーナーから入居者への退去要請は、以下の5つの要因を総合的に判断して行われます。

① オーナーと入居者それぞれが建物の使用を必要とする事情 ② 賃貸借契約に関する従前の経過 ③ 建物の利用状況 ④ 建物の現況 ⑤ オーナーから入居者に提供する立退料の申し出

このうち、最も重視されるのが①の建物を必要とする事情です。 オーナーが「自分たち家族が住みたい」「事業に使いたい」などの理由で入居者に退去してもらいたい事情と、入居者側の住みたい事情を比較して正当な事由であるかを判断します。   ②から⑤は①の事由を補完する要素として扱われ、最終的には法的な判断が行われます。 過去にはビルの老朽化に伴う建て替え、生活に困窮するオーナーが物件の処分を必要としていた点などが正当な事由として扱われたほか、長年入居者が賃借物件で継続的に行っている事業を理由に立ち退きが認められなかった判例があります。

4.【オーナー必見】迷惑な入居者を退去させるためのマニュアル

法的に保護されている入居者を強制退去させるためには「オーナーと入居者の間の信頼関係が崩壊している状態」であることが条件に挙げられます。 悪臭や騒音がどれほど迷惑だったとしても、一度の注意もしないままでは信頼関係が崩壊していると主張するのは難しいでしょう。   また、家賃の滞納も1カ月だけでは信頼関係の崩壊とまではみなされません。 信頼関係の崩壊は、何度注意しても行動が改善されない、3カ月以上家賃の滞納が続いている状態を経過してようやく認められます。 オーナーは堂々と契約解除を主張できるよう、信頼関係の構築に努力したという実績を残す必要があります。

①通報を受けてから1週間以内

強制退去の原因となる迷惑行為は、その多くが他の入居者からの通報で明らかになります。 まずは発生している問題の現状を把握しつつ、注意喚起を行いましょう。  

問題把握のための状況記録

オーナーが直接問題行為を確認できるのが好ましいです。 常にオーナーが物件に常駐できない場合、通報してくれた住民にスマホで録画や録音をしてもらい、後日データを共有してもらえるようにお願いしてみましょう。  

住民全体への注意喚起

オーナーが問題を認識していることを迷惑入居者に知らせるため、掲示板等に注意喚起の張り紙を行いましょう。 具体的な個人名や問題行為の詳細は明記せず、まずは騒音や悪臭に注意してほしいという旨を掲載します。 悪意を持って迷惑行為を行っていない場合、この掲示だけで問題が解決する場合があります。

②改善しないまま2週間を迎えた場合

最初の通報から1週間以上が経過し、張り紙を掲示した以降も問題行為が収まらない場合には次の対応を検討しましょう。

裁判を視野に入れた継続的な状況記録

通報者にお願いしていた記録のデータを受け取った後も、継続して記録をお願いしましょう。 誰がどのような行為を行って周囲に迷惑をかけているか把握できた後の記録は、問題の把握ではなく、今後裁判となった際の証拠収集が目的となります。  

さらに強力な注意喚起

掲示板への注意喚起を継続すると同時に、オーナーが問題解決へ具体的に乗り出しているというメッセージを強めます。 共用部へのカメラ設置および「防犯カメラ録画中」の掲示は、より監視が強まっていると感じさせます。 こうした対応で問題が解決しないようなら、各部屋への注意喚起の手紙投函を経て、問題行為を行っている本人への交渉を行います。 最初は現状を把握するためのヒアリングの形から入り、回数を重ねながら「こうした行為はやめてほしい」というような具体的な注意に内容を変えていきましょう。  

家賃滞納者への督促を開始

家賃を滞納し始めた入居者に対しては、録音や掲示といった対応は必要ありません。 まずは本来の入金予定日までに入金がなかった旨を伝え、支払期日を確認する程度にとどめてよいでしょう。   2カ月以降も家賃の滞納が続くようなら、より具体的に支払いを督促しましょう。 契約時に連帯保証人を設定しているなら、家賃の滞納が続いている旨を連絡します。 第三者への連絡をきっかけとして支払いに応じるケースもありますが、これでも滞納が続くようなら次のステップへと進みましょう。

③迷惑状態が3カ月継続した場合

近隣への問題行為や家賃の滞納が3カ月継続してしまうと、多くの場合オーナーと入居者による本人同士だけの解決は困難です。 退去を求めるための要件である「信頼関係の崩壊」に該当すると判断し、契約解除へ向けた手続きを進めます。  

内容証明郵便の送付

問題の入居者に対し、賃貸契約解除通知を内容証明郵便で送付しましょう。 内容証明郵便は「いつ・誰に・どのような内容で・郵便を送った」という内容を証明する公的な手続きです。 法的な強制力をともなわないものの、今後訴訟へと発展した際には有力な証拠のひとつとなるため、賃貸契約解除通知は必ず内容証明郵便で送る必要があります。  

契約解除に向けた交渉

賃貸契約解除通知の内容をもとに、問題の入居者と契約解除に向けた交渉を行います。 正しく手順を追っていればオーナーに強制解約を行うだけの材料は揃っていますので、この時点で大半の入居者は契約解除に同意します。 それでもなお強固に立ち退きを拒む場合には、オーナーから引っ越し代金程度の立退料を支払うことも検討してよいでしょう。 なお、今後の訴訟の可能性を踏まえ、この交渉からは弁護士を介入させるのがオススメです。  

決裂した場合は不動産明渡請求訴訟

交渉が決裂し契約解除に同意できなかった場合、オーナーは裁判所に不動産明渡請求訴訟を提訴できます。 オーナーが退去を求める事由が正当であると認められれば、入居者に対して建物の明け渡しと滞納家賃の支払いといった命令が下されます。   なお、裁判が始まった後も交渉を継続して問題ありません。 判決による各種費用の支払命令は法的な強制力をともなうため、多額の支払い義務が生じます。 入居者側の費用負担が最大化される結果になるため、少しでも有利な条件で解約できるように和解を申し入れる入居者も少なくありません。  

期日までに退去しなければ強制執行

建物明け渡しの判決や和解の成立にともない、建物の明け渡し日が決まります。 この時点ではオーナーは問題の入居者を強制的に退去させられませんが、約束の日までの退去が完了しなかった場合は、強制執行により執行官立ち会いのもとで全て強制的に運び出されます。 強制執行により運び出された荷物は、執行官が指定する場所に一時的に保管されます。 この時点では所有権は元入居者にありますが、期日までに引き取られない場合は所有権が失効し、強制的に売却または廃棄されます。

5.強制退去までに必要な費用

強制退去は手続きの開始から数カ月程度、裁判も含めれば半年から1年ほどの時間がかかります。 また、それぞれの段階で手続きや対応のための費用が必要ですので、強制退去手続きの前には必要な資金を確保しておきましょう。

①問題解決のお願い

入居者に対し、迷惑行為の停止や家賃の支払いといった問題の解決をお願いする際、連絡手段によっては費用がかかります。 手紙や電話、掲示板への張り紙に多少のお金がかかる程度ですので、この時点では大きな出費は発生しません。

郵便代、通話料金、コピー・プリント代など …… 10~200円

②内容証明郵便

賃貸契約解除通知を送付する内容証明郵便は、複数の郵便サービスを利用して送付します。 内容証明郵便は使用できる行数や1行に入れられる文字数に規定があるため、記載する内容によっては通知が複数枚に渡り、費用が加算される場合があります。

内容証明の加算料金 …… 440円(2枚目以降は260円増) 定形郵便(25g以内) …… 84円 一般書留の加算料金 …… 435円 配達証明の加算料金 …… 320円 速達の加算料金(250g以内) …… 260円 配達日指定の加算料金 …… 平日指定は32円、土日祝指定は210円

  速達や配達日指定を利用しない基本的な構成で内容証明郵便を送る場合、謄本1枚なら1,279円の配達料金が必要です。 なお、内容証明郵便の書式はそれほど複雑ではないため、オーナー本人でも十分に作成できます。 しかし万全を期したい、本気度を伝えたいといった理由がある場合には、弁護士に作成を依頼することも可能です。

弁護士への内容証明郵便作成依頼費用 …… 5万~10万円 

③明け渡し訴訟の提起

入居者が和解に応じない場合には、明け渡し訴訟を提起します。 裁判は高度な専門的知識が必要ですので、個人で対応はせず弁護士へ依頼するとよいでしょう。

弁護士費用(着手金+報酬) …… 50万円前後 収入印紙代 …… 1万円以下 予納郵便切手 …… 6,000円前後 

この時点からは本格的に弁護士が介入するため、非常に高額の費用がかかるようになります。

④強制執行

和解または判決によって決められた退去予定日までに入居者が退去しない場合には、強制執行による強制退去を行います。 強制執行の手続きも裁判同様に専門的な領域であるため、弁護士への依頼が無難です。 強制執行は裁判所の職員である執行官の立ち会いだけでなく、部屋の解錠や荷物の運搬、不用品の廃棄といったさまざまな役割の人々の協力が必要です。

執行官への予納金 …… 6万円前後 解錠費用 …… 2~5万円 荷物の運搬費 …… 10~50万円 荷物の廃棄費 …… 5万円前後 弁護士費用(強制執行+明け渡し実現報酬) …… 15~40万円 

  強制執行にかかる③および④の費用は、一時的にオーナーが立て替える必要はありますが、原則として元入居者への請求が認められています。 しかし、元入居者が家賃を払えないほど経済的に困窮している場合、全く回収できないケースも少なくありません。 そうなると残念ながら泣き寝入りせざるを得なくなりますので、入居者選びの時点で不穏な方を入居させないような注意が重要になるでしょう。

まとめ

賃貸物件を借りる側である入居者は法的に強い保護を受けており、オーナーの一存だけで賃貸契約を解除できません。 たとえ入居者が近隣に迷惑をかける問題行為を行っていたとしても、オーナーからの契約解除には正当な事由が必要となるため、法的に認められるための手順を踏む必要があります。 また、正当な事由に基づく契約解除もスムーズに進むとは限りません。 大変な手間暇と費用をかける必要がありますが、スムーズに契約解除の手続きを進めるためにも、必要な対応の手順を理解しておきましょう。   弊社ランドネットは、一軒家・マンションを問わず賃貸物件の集客・管理を専門に取り扱っております。 長年の経験の中で、多くの強制退去の事例も扱ってまいりました。 賃貸契約解除はオーナー様の大きな悩みでありながら、個人で解決するのは非常に困難な問題です。 入居者との契約解除対応にご不安があるようなら、ぜひ賃貸管理のエキスパートであるランドネットのスタッフまでご相談ください。
監修者
徳永 光泰【株式会社ランドネット】
徳永 光泰【株式会社ランドネット】
多店舗展開の賃貸仲介・管理会社で統括マネジャーを経験!他、不動産ベンチャー企業で執行役員として創設期に携わり、大手不動産会社ではプロパティマネジメントに従事する。【資格】宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター【不動産業界歴】26年

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