東京都内で有効な空室対策とは?競争が激しい賃貸住宅市場で勝つ方法
空室対策
東京都内は人口が集中しており、多くの賃貸住宅が立ち並ぶ市場です。
しかしながら、賃貸需要は高いものの、近年は物件の供給数が需要を上回り、オーナーにとっては厳しい状況が続いています。
「以前より空室が続くようになった」
「募集をかけても問い合わせが来ない」
といったお悩みを抱えるオーナーも少なくありません。
競争が激しい賃貸住宅市場だからこそ、入居者に選ばれるために、所有物件のエリアやターゲットに合わせた有効な空室対策が必要不可欠です。
本記事では、東京都内の最新市況データに基づいた有効な空室対策、さらには信頼できる管理会社選びのポイントまで解説します。
目次
1.東京都内の賃貸住宅市況
なぜ、東京都内で空室対策の重要性が増しているのでしょうか。
その理由を客観的なデータから読み解きましょう。
(1)上昇する家賃相場

出典:全国賃貸管理ビジネス協会「全国家賃動向」より当社作成
※各年12月時点のデータを抜粋
※契約ベースによる統計
東京都内の平均家賃は、7万円台前半で推移していました。
しかし、2024年は前年から5,000円ほど値上がりしています。
背景には物価高や住宅ローン金利などによる持ち家需要の停滞、地価上昇といった事情があり、家賃は今後も上昇を続けるかもしれません。
(2)東京都の空き家率は17%台、全国4位の低さ
| 賃貸物件数(戸) | うち空き家数(戸) | 空き家率 | |
| 全国 | 19,461,700 | 4,435,800 | 22.79% |
| 東京都 | 3,538,800 | 629,000 | 17.77% |
| 23区 | 2,714,300 | 458,200 | 16.88% |
出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」他より当社作成
東京都内における賃貸物件の空き家率は、約18%です。
全国平均の約23%と比較すると低く、全都道府県でみても第4位の低さです。
23区に限定すれば17%を下回ることから、賃貸需要の高さがうかがえます。
ただし、空き家率が低くても、賃貸物件の戸数は多いため、競争が激しいエリアだと言えるでしょう。

出典:東京都「住宅着工統計」より当社作成
一方で、都内における賃貸物件の新設着工数は、高い水準で推移しています。
2023年度は減少傾向にあるものの、68,000戸におよぶ賃貸物件の建築が開始されました。
これは競合となる物件が増え続けていることを意味しており、都内に物件を所有するオーナーは厳しい競争にさらされています。
新築物件との競争に競り勝つためにも、オーナーには自らの物件を入居者に選んでもらうための積極的な工夫が求められています。
※あわせて読みたい
【東京都】賃貸経営の市況解説!世帯数・新設戸数・家賃-2025年版
2.東京都内の入居者ターゲットは?
入居希望者が物件に求める要素はさまざまです。
空室対策を効果的に行うためには、「誰に住んでもらいたいか」という入居者ターゲットを明確にすることが重要です。
(1)地方からの移住者と単身者がメインターゲット
東京の賃貸住宅市場における最大のターゲット層は、進学や就職を機に地方から移住する学生や新社会人、都内で働く単身者です。
年齢層でみれば20代が中心であり、他道府県からの転入者のうち、男女ともに50%以上を20~29歳が占めています。
|
他道府県からの転入者数 |
20~29歳(人) |
割合 |
|
|
男性 |
244,669 |
125,151 |
51.2% |
|
女性 |
216,785 | 114,909 | 53.0% |
出典:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」2024年(令和6年)結果より当社作成
若年層は初めて一人暮らしをするケースも多く、物件選びではセキュリティの高さを重視する傾向があります。
また、現代のライフスタイルに欠かせないインターネット環境や、初期費用を抑えられるかどうかも重要な判断基準になるでしょう。
(2)近年増加する外国人留学生・労働者
近年、都内では外国人留学生や外国人労働者の数も増加しており、新たな入居者ターゲットとして注目されています。
東京都の外国人人口は、直近10年で約1.6倍に増加。
今後も増加しつづけるであろう外国人を受け入れることで、空室改善の可能性が広がります。
|
年 |
都内全域における外国人(人) |
東京区部における外国人(人) |
|
2016 |
449,042 |
378,642 |
|
2017 |
486,346 |
410,650 |
|
2018 |
521,500 |
439,959 |
|
2019 |
551,683 |
465,191 |
|
2020 |
577,329 |
485,967 |
|
2021 |
546,436 |
456,873 |
|
2022 |
517,881 |
430,444 |
|
2023 |
581,112 |
485,444 |
|
2024 |
647,416 |
542,864 |
|
2025 |
721,223 | 605,506 |
※各年1月1日現在
出典:東京都の統計「外国人人口」より当社作成
ただし、文化や習慣の違いへの理解や、保証会社の利用、契約時の言語対応など、受け入れにあたっての準備も必要になる点は留意すべきです。
(3)家賃の安定確保が見込める「単身赴任者・転勤族」
法人契約となる単身赴任者や転勤族は、入居者ターゲットとして魅力的です。
会社が家賃を負担するため、安定した家賃収入が期待できるほか、比較的高い家賃帯でも入居する可能性があります。
数年ごとに異動する人も多く、家具家電付きの物件や、交通の利便性が高い駅近の物件などが人気です。
3.入居者に選ばれる人気の付帯設備

ターゲットを定めたら、次はそのターゲットに響く「物件の魅力」を高める必要があります。
競合物件が多い東京都内では、内見時の印象を大きく左右する付帯設備の充実度が重要です。
(1)この設備があれば家賃が高くても決まる⁈ 単身者向け設備ランキングTOP5
全国賃貸住宅新聞が発表した「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」ランキングでは、現代の入居者ニーズが明確に示されています。
単審者向け設備の第1位は、「インターネット無料」です。
今や仕事にもプライベートにも必須のインフラであり、入居後すぐに使える手軽さが大きな魅力です。
充実したネット環境への支持は近年始まったものではなく、同ランキングでは10年連続でトップに選ばれています。
続く第2位は、「宅配ボックス」がランクインしています。
不在時でも荷物を受け取れるため、日中家を空けることが多い単身者や共働きの世帯から絶大な支持を集めています。
ちなみに、第3位が「エントランスのオートロック」、第4位が「独立洗面台」、第5位が「浴室換気乾燥機」という結果でした。
これらの結果から、単身入居者はセキュリティや快適な生活に直結する設備を重視していることがわかります。
(2)導入コストと効果を比較!費用対効果の高い設備は?
便利な設備は、入居希望者にとって非常に魅力的です。
しかしながら、オーナーからすれば導入費用がかかるため、費用対効果の高い設備を優先して入れたいもの。
ランキング上位の設備の中でも、特に費用対効果が高いのが「インターネット無料」です。
全戸一括型のインターネットを導入すれば、各戸の費用負担を抑えつつ「インターネット無料」をアピールできるようになります。
これらの設備投資は、空室期間の短縮による機会損失の削減や、家賃の維持・微増にも繋がり、長期的に見れば十分に回収可能な投資といえるでしょう。
そして、「宅配ボックス」も比較的低コストで導入できる設備です。
日中不在の単身者にとってうれしい設備であることに加え、国土交通省が2025年6月から「置き配」標準化に向けた検討を始めたことにより、宅配ボックスの重要度はさらに増していくでしょう。
これらは他の設備に比べて比較的低コストで導入が可能でありながら、物件情報サイトでの検索条件に含まれやすいため、内見の機会を増やす効果が期待できます。
4.【実践編】東京で効果の高い5つの空室対策

賃貸オーナーが実際に取り組める、東京の賃貸住宅市場で有効な空室対策を5つご紹介します。
①【定期清掃】内見の第一印象を最大化する美観
入居希望者が内見に訪れた際、最初に目にするのはエントランスや廊下、ゴミ置き場といった共用部です。
多くの住人が使用する共用部が汚れていたり、管理が行き届いていなかったりすると、部屋を見る前に悪い印象を与えてしまいかねません。
清潔感のある美しい外観は、物件全体の価値を高めます。
プロによる定期的な清掃を導入し、常に物件を最高の状態でアピールできる準備を整えておきましょう。
②【家賃設定】周辺相場と需要を捉えた賃料の適正化
空室が続くと家賃の引き下げを検討しがちですが、一度下げた家賃は今後上げにくくなるため、最終手段として考えるべきです。
まずは周辺にある競合物件の募集状況や成約事例を調査し、自身の物件に見合った適正家賃を見極めることが重要です。
敷金礼金ゼロ化や、一定期間の家賃を無料にするフリーレントの設定など、初期費用を抑える工夫も入居者の心に響く有効な戦略となります。
③【設備導入】「インターネット無料・宅配ボックス」は低コストで差別化
前述の通り「インターネット無料」と「宅配ボックス」の導入は、東京の単身者向け物件において強力なアピールポイントになります。
多くの入居者が物件探しの際に必須条件として挙げる設備を整えることで、競合物件との明確な差別化が図れます。
まだ導入されていない場合は、最優先で検討する価値があるでしょう。
④【広告費(AD)】仲介会社を味方につけて募集強化
不動産仲介会社に物件を優先的に紹介してもらうためのインセンティブが「広告費(AD)」です。
入居が決まりにくい時期や競合が多いエリアでは、物件情報が人の目に触れる機会が大きく減少します。
そこで、広告費を投入し露出を増やすことで、効率よく募集活動を行えます。
⑤【迅速なトラブル対応】入居後の満足度アップ
入居者が決まれば、そこで空室対策は終わりじゃありません。
設備故障や近隣との騒音トラブルなどが発生した際、迅速かつ丁寧な対応が入居者の満足度を大きく左右します。
入居者の満足度が高い物件ほど、契約更新が多く入居率も向上。
入居後も継続して安心感を提供することこそ、長期的な空室リスクを減らす有効な対策といえるでしょう。
5.それでも空室が埋まらないなら…「管理会社の見直し」を要検討

すでに複数の対策を試みたものの、長らく入居率が改善しないオーナーも多いでしょう。
コストをかけても入居者が集まらない場合、原因は賃貸経営のパートナーである管理会社にあるかもしれません。
(1)管理会社によって「入居率」が変わる3つの理由
優れた管理会社は、空室対策においてオーナーの強力な味方となります。
その差は主に3つの力に現れます。
一つ目は「客付け力」です。
優れた管理会社は、入居者にアピールできる募集図面の作成や、不動産ポータルサイトへの効果的な情報掲載、そして地域の仲介会社への細やかな情報発信など、入居希望者の目に触れる機会を最大化するノウハウを持っています。
二つ目は「提案力」です。
地域の賃貸住宅市場を的確に分析し、適正な家賃査定や費用対効果の高いリフォーム、時代に合った設備投資など、物件価値を最大化するための具体的な提案を行います。
三つ目は「管理の質」です。
迅速なトラブル対応や、丁寧な入居者フォローによって退去率を下げ、安定した賃貸経営を支えます。
これらの総合力が、最終的に物件の入居率、ひいてはオーナーの手残りに大きな差を生むのです。
もし入居率が改善しないようなら、管理会社の見直しを視野に入れてよいでしょう。
まとめ
競争が激化する東京都内の賃貸住宅市場では、最新市況と入居者ターゲットを正しく理解し、物件の魅力を高める設備投資や美観維持、効果的な募集戦略を複合的に実践することが重要です。
これらの対策をオーナー自身で行うことに限界を感じたり、管理会社の対応に不満を感じている場合は、実績豊富な管理会社に変更することも有効でしょう。
空室改善に近づく糸口になるかもしれません。
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