民泊参入の規制緩和でインバウンド需要は増加するのか?

賃貸市況

新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的に行われていたインバウンド(訪日外国人客)の入国規制が2022年10月に緩和。

68の国・地域に対するビザ免除が再開されました。

これにより旅行業界や観光業界が賑わいを取り戻し始めています。

政府は住居を活用して旅行者などに宿泊サービスを提供する「民泊」に対し、2025年を目処に運営事業への参入要件を緩和する考えを示しました。

政府が積極的に民泊事業への参入を認める背景には、どのような事情があるのでしょうか。

今回はインバウンド増加の統計情報から、規制緩和に繋がる背景についてご紹介します。

1.2023年の訪日外客数推移

長らく続いていた訪日外国人客に対する入国規制が、2022年10月に一部緩和となりました。

1日5万人までとされていた外国人旅行客の入国上限が撤廃され、個人の外国人観光客の入国が認められるなど、入国の条件がほぼコロナ禍前の状態に戻されました。

1)訪日外国人客がコロナ禍前の66.6%まで回復

2022年10月の入国規制緩和以降、訪日外国人の数は順調な回復を見せています。

日本政府観光局(JNTO)によれば、2023年4月の訪日外客数は195万人となりました。

2022年同月の約14万人との比較では、1年で1296.7%の増加を記録しています。

まだコロナ禍以前の状況に戻ったとはいえませんが、2019年同月における訪日外客数約293万人と比較すると、コロナ禍前の66.6%まで回復していることがうかがえます。

2)韓国・台湾・アメリカが上位、中国は規制緩和待ち

国別では韓国からの訪日客が最も多く、2023年4月には約46.7万人が日本を訪れました。

2019年同月の約56.7万人と比べ82.4%と、高い回復率を示しています。

次いで台湾からの来日客が多く、約29.2万人。 韓国ほどの回復率ではないものの、2019年同月比で72.3%まで回復。

注目すべきはアメリカからの訪日客の増加です。

2023年4月には約18.4万人が来日しており、2019年同月の約17万人を8.0%上回る好調ぶりを見せました。  

一方、2023年4月時点で回復の兆しが見えないのが中国です。 2023年4月の訪日客数は約10.8万人。

これは2019年同月の約72.6万人に比べ、わずか15%程度に留まっています。

この背景には、日本が求めていた「中国本土からの出国前72時間以内の陰性証明の提示」の影響がありますが、この要求は2023年4月5日に撤回。

さらには5月8日からの感染症法上の分類が2類から5類に引き下げられたことで、ワクチンの接種証明の提示も不要となっています。

この規制緩和を受け、中国からの訪日客数は5月以降から増加することが予想されています。

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2023年5月から予想通り訪日中国人が増えており、2022年18.9万人に対して、2023年は242.5万人まで回復しました。

2019年(959.4万人)に比べてまだ1/3程度ですが、2019年頃の水準に戻る可能性は非常に高いでしょう。

 

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2.商機到来!インバウンド増加を見据えた民泊事業の動き

インバウンドの回復にともない盛り上がりを見せているのが、民泊事業です。

一般の戸建てやマンションなどを旅行者向けの宿泊施設として活用する民泊は、訪日外国人観光客の受け入れ先として大いに活用されています。

一方、参入条件の厳しさや施設管理・サービス維持の難しさといった理由から民泊事業者数が伸び悩みを見せており、今後増加するであろう訪日外国人観光客の受け入れ先の確保が課題となっています。

1)2025年から民泊管理業者への参入規制が緩和

2023年3月7日、国土交通省は民泊事業に用いる物件を管理する事業者について、従来よりも参入条件を緩和する制度の概要をまとめました。

現在、民泊を運営するためには国土交通省に「住宅宿泊管理業者」として登録を済ませる必要があり、以下の2点のいずれかの条件を満たすことが要件とされています。

民泊への参入条件
  • 住宅の取得および管理に関する業務に2年以上従事
  • 宅地建物取引士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士いずれかの資格所有者

住宅宿泊管理業者は、民泊施設の家主である「住宅宿泊事業者」が不在または5室を超える民泊施設を運営する場合、住宅宿泊管理業者に管理業務を委託することが義務づけられています。

そのため住宅宿泊管理業者の人数に比例して民泊施設が増えることが期待できますが、前述の通り住宅宿泊管理業者になるための要件を満たすのは簡単ではないため、民泊事業者数が伸び悩む理由となっています。  

そこで、国土交通省は関係団体との協議を経て、住宅宿泊管理業者の登録要件に以下の内容を追加するように見直しを行いました。

「法その他の関連法令に関する科目」の通信講座20時間、講義7時間を修了

これにより、不動産業界における実務経験や資格がなくても住宅宿泊管理業者として登録が可能となります。

国土交通省は2023年中に本制度の施行を目指しており、7~8月を目処に省令およびガイドラインの改正、講習機関の募集開始を予定しています。

2)民泊参入の規制緩和でインバウンド需要は増加するのか?

2023年の官公庁のデータによると、2019年が5196万人の訪日外国人に対して、2023年は3469万と全盛期の約7割も戻っていません。

参照:観光庁

 

その為、最低でも1,4倍(0.7×1.4=0.98)まではインバウンド増加は見込めると考えてもよさそうです。

気になるのが、訪日外国人消費動向調査で、2019年の七割の訪日外国人であった2023年度の方がインバウンドによる消費額が5兆円を超え、過去最高記録になったことです。

民泊などで法整備が進めば、滞在時間が延びることで更にインバウンド需要が高まると予想されます。

その中でも地方の訪日が増えると言われていることから、空室が長引いていた地方エリアの物件が民泊特化にすることで収益が改善される可能性があると言えるでしょう。

3.期待される「地方」民泊事業者の増加

住宅宿泊管理業者登録の要件緩和の背景には、訪日外国人による民泊利用実績の増加と、地域による民泊事業者数の偏りがあります。

入国規制緩和の影響を受けて訪日外国人旅行客が爆発的に増加。

それにともない、民泊の利用者も大きく増加しました。  

2023年2月~3月にかけての宿泊人数は251,788人。 前年同時期の140,442人に比べ、約1.8倍まで増加する結果となりました。

人泊数では、2023年2月~3月の613,718人泊に対し、2022年では287,426人泊と約2.1倍。

この結果からは、規制緩和による訪日外国人観光客の増加に加え、宿泊期間の長期化やリピートが進んでいることがうかがえます。  

1)市場が伸びているのに民泊施設が増えない理由

一方、観光客の受け入れ先である民泊施設は、その数に大きな変化がありません。

2022年3月時点の住宅宿泊事業の届出住宅数は18,196件。 2023年3月は18,760件と、1年で500件強の増加しかありません。

この伸び悩みの理由のひとつが、住宅宿泊管理業者の不足です。

都市部では不動産業界経験者や資格保有者が多いため、民泊施設の管理を行う人材の確保はそれほど難しくありません。

しかし、地方に行くほど住宅宿泊管理業者の要件を満たせる人材は現役の不動産事業者に片寄りやすくなります。

そのため住宅物件を保有する一般人が民泊業に参入しようとしても、有資格者や業界経験者といった委託先を見つけるのが困難だと考えられています。

現在、政府が推し進めている住宅宿泊管理業者の要件緩和は、こうした地方の住宅宿泊管理業者不足を解決する方法として注目されています。

宿泊施設不足を理由に観光資源を活かせない地方にとって、民泊施設の増加は救いの手になってくれるかもしれません。

 

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まとめ

感染拡大防止の水際対策が緩和され、にわかに訪日外国人観光客の姿が増え始めました。

観光大国である日本にとって、インバウンドの増加は待ちに待ったチャンス。

積極的に外国人観光客を迎え入れるためにも、民泊施設を含めた宿泊施設の増加が望まれています。

 政府は民泊施設の管理者である住宅宿泊管理業者登録の要件を、2023年7月以降を目処に緩和することを決定しました。

これまで不動産業界の経験者や有資格者に限られていた管理者登録が解放されることで、個人や他業種による民泊事業への参入増加が期待されています。

不動産投資家にとって、この要件緩和は民泊事業への参入する大きなチャンスとなります。

ただし民泊を検討したい人は180日ルールは忘れないようにしましょう。

民泊を始める手続きは?要注意180日ルールも解説!

監修者
櫻井 彰人【株式会社ランドネット】
櫻井 彰人【株式会社ランドネット】
原状回復工事や入居者募集をメーンに活躍!空室に悩むオーナーを幾度となく救ってきたリーシング(空室改善)のエキスパート。【資格】宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士【不動産業界歴】13年

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