家賃の値上げはできる?交渉の条件や成功のコツ解説【賃貸オーナー向け】

収益アップ

時代の流れによって、賃貸住宅における人気のエリアも変わってきます。

駅周辺の再開発や、新駅の開設など街の利便性が高まればエリアの人気も高まり、家賃相場は高くなります。

その際に、相場に合わせて家賃を値上げしたいと考えるオーナーもいらっしゃるでしょう。  

しかしながら、家賃の値上げに対しては入居者から拒否されてしまう可能性もあります。

家賃の値上げを成功させるためには、どのような手順で値上げの交渉をしていけばよいのでしょうか。

今回は、家賃の値上げを成功させるコツについてご説明します。

1.家賃の値上げには正当な理由が必要

そもそも、一旦設定した家賃を値上げすることはできるものなのか、疑問に思っているオーナーもいらっしゃるかもしれません。

家賃の値上げは、借地借家法でも認められているオーナーの権利であり、家賃の値上げは可能です。

しかしながら、どのようなケースであっても家賃の値上げが認められているわけではありません。

次のように、家賃を値上げする正当な理由が認められる場合だけです。

1)経済状況が変動して、家賃がふさわしい額ではなくなった場合

物価や賃金相場が上がったり経済状況が変わったりすれば、家賃の額も見直しが必要になります。

物価が上昇すればお金の価値は目減りしてしまうため、これまでと同じ家賃ではオーナーの収益が減少してしまうことになるのです。

お金の目減り分を鑑み、家賃が適正な額ではないと判断される場合は、家賃の値上げも認められるでしょう。

2)周辺相場と比べて家賃が低い場合

賃貸物件の家賃は、駅からの距離や物件の建つエリア、専有面積、築年数などによって変わります。

周辺の家賃相場と比較して、現在の家賃が低く設定されているようであれば、周辺エリアの家賃に合わせる形で家賃の値上げ交渉しても良いでしょう。

3)固定資産税などが変化し、家賃の値上げが必要な場合

再開発などによってエリアの利便性が高まれば、その土地の価値が高まり、固定資産税や都市計画税の額も高くなります。

固定資産税や都市計画税が増えればオーナーの負担も大きくなるため、家賃を値上げした場合でも正当な理由であると認められます。

2.家賃の値上げが認められないケース

家賃の値上げが認められるのは、上記でご紹介したような正当な理由がある場合です。

したがって、次のようなケースでは家賃の値上げは認められません。

仮に家賃値上げの交渉をしたとしても、入居者から裁判に訴えられれば、値上げが不当であると判断されるため注意が必要です。

1)オーナーが収益を上げたくて家賃の値上げをするケース

周辺相場と比較しても家賃が低いわけでもなく、経済状況が変化してもいない状況で、オーナーの収益をアップさせたいという理由では家賃の値上げは認められていません。

負債があるために収益を増やしたいといったオーナーの個人的な事情があったとしても、法律上では家賃の値上げは認められないのです。

2)家賃相場と比べて著しく高い家賃への値上げをするケース

周辺の家賃相場が上がった場合は、家賃を値上げする正当な理由があると認められます。

しかし、その場合であっても家賃相場と比べて極端に高い額の家賃にまで値上げすることはできません。

例えばワンルームの家賃相場が8万円の場所で、家賃を15万円に値上げするケースなどは、不当な家賃の値上げに該当します。

家賃を上げる場合であっても、上げられる家賃の額は相場と比較して適当な額だと認められる範囲内に設定しなければいけないのです。

3)契約書で一定期間内の家賃の値上げは行わないと明記しているケース

賃貸契約書の中で、一定期間は家賃を値上げしないとした特約を記載している場合は、その期間内に家賃を値上げすることはできません。

契約書の中で家賃を値上げしないことを謳っている場合は、たとえその期間内に経済状況が変化しても周辺の家賃相場が上がっても、家賃の値上げはできない点に注意が必要です。

3.家賃の値上げによって起こり得るリスク

家賃を値上げすれば、オーナーの収益は増えます。

しかし、入居者にとっては月々の負担が増えることになり、家賃の値上げを歓迎する人はいないでしょう。

家賃の値上げには、収益アップというメリットもありますが次のようなリスクが生じる可能性があることも覚えておく必要があります。

1)家賃の値上げを拒否し、退去につながる場合がある

家賃の値上げをすれば、当然、今住んでいる入居者の中には値上げを拒否する人も出てくるでしょう。

現在の家賃であるから住んでいるという人にとっては、家賃が上がるのであれば他の場所に引っ越した方が良いと判断する人もいるはずです。

家賃の値上げをすると入居者が反発し、退去してしまうというリスクがあります。

2)キャッシュフローの悪化

家賃の値上げを拒否し、退去してしまう入居者が出てくれば、空室が発生します。

空室期間は家賃収入を得られないため、空室期間が長引くとキャッシュフローが悪化してしまうリスクがあります。

安易に家賃の値上げを決断すると、かえってキャッシュフローが悪化する可能性があることも忘れてはなりません。

3)話し合いが決裂すれば裁判に発展する恐れがある

家賃の値上げについて、入居者がこれを拒否し合意しなければ、一方的に家賃を値上げすることはできません。

話し合いを続けても合意を得られない場合は、最終的に法的手段に訴え、問題を解決しなければならない可能性もあります。

家賃を値上げする際には、入居者の立場も考えたうえで、できるだけ早いタイミングで入居者の合意を得られるような交渉を行うことが大切です。

4.家賃値上げの流れ

正当な理由のもとで家賃の値上げを行う場合も、オーナーの一存で勝手に家賃を上げることはできません。

家賃を含めた契約条件の変更をする際には、オーナーと入居者の双方の合意が必要になるのです。

家賃を値上げする際の流れをご紹介します。

1)家賃の値上げ額を決定する

家賃の値上げについて、まずは値上げする額を決めておかなければなりません。

周辺エリアの家賃相場と比べて極端に高い額に家賃を値上げすることはできないため、相場チェックを実施しましょう。

また、あまりに家賃の値上げ額が高くなれば、入居者に拒否され、退去を促進してしまうリスクもあります。

周辺エリアの家賃相場と比較して妥当な額に設定することは大切ですが、入居者に受け入れやすい値上げ幅に留めることも大切です。

2)家賃の値上げ時期を決定する

家賃の値上げ額を決定したら、次にいつから家賃を値上げするのか、家賃を値上げする時期の検討をします。

実は、法律上では家賃の値上げ通告から値上げまでの期間が示されているわけではありません。

そのため、極端な話をすれば、明日から値上げをしますと通告しても問題にはならないのです。  

しかしながら、急に家賃の値上げを通告すれば、入居者がオーナーの一方的な値上げ宣告に気持ちよく合意するとは言い難いでしょう。

入居者の合意を得るためには、入居者に家賃の値上げを受け入れるかどうかを判断してもらうための時間を設けることが大切です。

3)入居者に家賃値上げの通告をする

家賃の値上げ額、値上げを実施する時期が決定したら、入居者に文書で家賃の値上げについての通告をします。

契約条件の変更となる大切な告知となるため、確実に入居者に文書を届けるため、配達証明付きの内容証明郵便で文書は送付もおすすめです。

値上げについての文書には、家賃の増加額と値上げを開始する日、値上げをする理由を明記します。

4)入居者との交渉を行う

入居者が値上げ後の家賃を支払えば、入居者も家賃値上げに合意したとみなすことができます。

しかし、入居者が家賃の値上げを拒否するケースもあります。

入居者が家賃の値上げを拒否した場合は、値上げ前の家賃を払い続けて居座ってしまうなど、トラブルに発展する可能性もあります。

入居者が家賃の値上げを拒否した場合には、家賃の値上げをするに至った理由について、わかりやすく説明をしたうえで、入居者と家賃の値上げについての交渉を行いましょう。

5)交渉がまとまらない場合は法的手続きを取る

家賃の値上げを拒否する入居者と交渉を続けても、値上げについての合意が得られない場合には、法的な手続きに進まなければなりません。

まずは、簡易裁判所に賃料増額の調停の申し立てをします。

調停では、裁判所の調停委員を交えて話し合いを進めます。

調停で合意が成立すれば問題ありませんが、調停が不成立となった場合は、賃料増額を請求する訴訟を起こさなければなりません。  

調停の申し立てや訴訟となると、弁護士に依頼するため費用等、手間も費用もかかります。 高くても数万円の家賃値上げの交渉であれば、できるだけ話し合いの場での解決を目指した方が賢明です。

5.家賃の値上げ交渉を成功させるコツとは

家賃の値上げ交渉が長引いても、オーナーにメリットはありません。

家賃の値上げ交渉を成功させ、スムーズに家賃の値上げを実現するためには次の点に気を付けましょう。

1)入居者が受け入れやすい家賃の値上げ額にする

入居者が家賃の値上げに合意するかどうかは、家賃の値上げ額が納得できる額であるかという点に大きく関わります。

例えば、1,000円の家賃の値上げに対しては合意をする人であっても、月に10,000円の値上げとなれば受け入れられないケースが多いでしょう。

まずは、家賃の値上げ額は慎重に決定し、入居者の合意を得られやすい値上げ幅に抑えることが大切です。

2)家賃を値上げする理由を丁寧に説明する

家賃の値上げをする際には、なぜ家賃をこのタイミングで値上げするのか、その理由について明確に示さなければなりません。

家賃が低いことを理由に値上げを要求するのであれば、周辺の家賃相場を示しましょう

客観的なデータを示せば、現在の家賃が低いこと、値上げをする額も妥当な範囲であることを入居者も理解しやすくなり、家賃の値上げを受け入れやすくなるはずです。

家賃の値上げ通告をする際には、なぜ家賃の値上げが必要なのか、入居者が家賃の値上げもやむを得ないと納得できるように値上げの理由を丁寧に説明しましょう。

3)入居者にメリットのある条件を付けて交渉する

家賃の値上げは、入居者にとっては負担が大きくなるだけでメリットはありません。

そのため、家賃の値上げ交渉をスムーズに進めるためには、交換条件として入居者にもメリットがあるような条件を提案してみると効果的です。  

例えば、家賃を値上げするけれど、合意をすれば次回の更新料を無料にするといった条件でも良いでしょう。

更新料の相場はエリアによって異なりますが、家賃の1ヶ月分とするケースが多くなっています。

たとえ月々の家賃が上がったとしても、家賃1ヶ月分の更新料が無料になった方がお得になると計算する人も少なくないはずです。

家賃を値上げする際には、引っ越しを検討する人も増えます。

しかし、引っ越し費用や新しい物件に支払う敷金・礼金を考えると、更新料を支払わずに住み続けられることにメリットを感じ、退去を抑制できる可能性が高まるでしょう。

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4)新たな設備の導入を家賃値上げの条件に

インターネット無料設備の導入、防犯カメラ、宅配ボックス、エアコンの設置など、入居者の生活利便性を高める設備を導入することで、家賃の値上げ交渉が受け入れやすくなるケースもあります

インターネットを個人で利用するためには、月々の回線使用料のほかに工事費用等の初期費用も発生します。

家賃が値上げされても、インターネットを個人で利用する際の費用負担と比較すれば、実質的な負担額は減少する可能性もあります。  

また、現在はネットショッピングを利用する人も多く、不在時でも荷物の受け取りができる宅配ボックスは入居者ニーズの高い設備です。

このように入居者の生活をより快適にする設備を導入すれば、家賃の値上げにも合意を得られやすくなり、より快適な物件に住みたいという入居者の退去も抑制できるようになるでしょう。

5)契約更新時の値上げ交渉は避ける

家賃の値上げを成功させるためには、家賃の値上げの時期をしっかり見極めることが大切です。

契約更新のタイミングは、値上げ交渉に適した時期ではありません。 そもそも、契約更新のタイミングは、更新料が発生するために退去が発生しやすいタイミングでもあります。

退去の多いタイミングで家賃の値上げを要求すれば、さらに退去を促進してしまう可能性が高くなるでしょう。  

また、契約更新時に家賃の値上げを要求した場合、更新期日までに入居者の合意を得られなければ、法定更新と呼ばれる契約状態となります。

法定更新は、入居者保護の目的から、これまでの契約内容、契約条件で自動的に契約更新がなされます。

つまり、値上げする前の家賃のまま、賃貸借契約が継続されてしまうのです。 家賃の値上げを成功させるためには、契約更新のタイミングでの値上げは避けるようにしましょう。

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6)信頼できる賃貸管理会社に相談する

家賃の値上げ交渉を成功させる最大のコツは、信頼できる賃貸管理会社に対応を依頼することです。

賃貸管理会社であれば、周辺の賃貸物件の家賃相場を把握しており、入居者に家賃の値上げを交渉する場合も根拠となるデータを示し、スムーズに値上げの交渉を行うことができるでしょう。

また、これまでにも家賃の値上げを成功させてきた実績があれば、入居者が受け入れやすい値上げ幅や交渉をスムーズに決着させるための条件などについても適切なアドバイスを受けられるはずです。

なにより、家賃の値上げに対する通知書の作成や入居者からの問い合わせ窓口としても対応してもらえるため、オーナーにかかる負担を軽減できます。  

家賃の値上げ交渉がうまくまとまらなければ、最悪のケースでは法的手続きに発展するリスクもあります。

裁判にまで発展すれば、家賃の値上げによってアップできる収益よりも裁判にかかる費用の方が高くなってしまう恐れもあるでしょう。

家賃の値上げを検討しているようであれば、まずは管理会社に相談してみることをおすすめします。

まとめ

家賃の値上げは入居者にとって何のメリットもないため、値上げのタイミングで退去を検討する入居者も出てくる可能性があるでしょう。

その為、新たな設備の導入や更新料の値下げなど、入居者が値上げを受け入れやすい条件を付けて値上げ交渉をすることをおすすめします。

一時的には退去が出てしまいキャッシュフローが悪化するケースもあるかもしれません。

しかし、出口戦略を考えて家賃の値上げ交渉に成功した場合は、何十万~以上増えることも珍しくありません。

弊社では、これまでにも値上げ交渉を成功させてきた実績があります。

更新時に家賃の値上げを検討されているようであれば、まずはお気軽にご相談ください。

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監修者
稲田 正太【株式会社ランドネット】
稲田 正太【株式会社ランドネット】
賃貸仲介の会社で営業を4年間経験。入居者目線を取り入れた賃貸管理の提案で満室経営に導く!【資格】宅地建物取引士・土地活用プランナー【不動産業界歴】9年

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