プロパンガスへの切替でオーナーは無償で設備設置できる?仕組みと注意点は?

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2023年7月23日、経済産業省は「LPガス(プロバンガス)料金に関係がない整備費を上乗せする商慣習『プロパンガススキーム』を禁止する方針」を発表しました。

プロパンガス(LPガス)事業者と密接な関係にあった賃貸物件オーナーにとって、この発表はどのような影響があるのでしょうか。

本記事では、賃貸物件にプロパンガスを導入するメリットと、法改正後に生まれるオーナーへの影響について解説します。

1.プロパンガスを導入すると設備投資が無償になる「プロパンガススキーム」とは

従来より、プロパンガス会社と契約した賃貸物件のオーナーに対し、設備等の無償貸与を行う契約内容を「プロパンガススキーム」と呼びます。

オーナーにとって設備投資費用の負担を軽減できるメリットがある一方、賃貸物件を利用する入居者から不評を買いやすいという問題点が指摘されていました。

1)プロパンガススキームの仕組み

プロパンガススキームにおいて、各プロパンガス会社は、賃貸物件オーナーとの契約を増やすために、サービスの一環として給湯器の無償交換やインターネット回線の無償導入、ビルトインコンロやエアコン、防犯カメラなどの無償貸与といったサービスを提供します。

オーナーからすれば、設備投資費用を大幅に抑えられるという大きなメリットがあります。  

しかし、プロパンガスは都市ガスとは異なり、業界団体や法令によるガス料金の設定に規制がないため、各社が価格を自由に設定できます。

プロパンガス会社は、負担している各設備等の費用を入居者のガス利用料金に上乗せして請求するため、利用者側からすればプロパンガスは割高感を感じやすいサービスになっているのです。

特に都市ガスのガス網が行き届いていない地域では、プロパンガス会社同士による価格競争が働きにくくなるでしょう。

これにより、入居者は不利な条件でガスの契約を結ばざるを得ないケースが生まれ、結果として入居者の不満が募りやすくなると予想されます。

2)法改正の内容

こうした事情を背景に、経済産業省はLPガス(プロバンガス)料金に関係がない整備費を上乗せする商慣習について、禁止する方針を発表。

プロパンガス料金の不当な請求を是正すべく動き始めました。

2023年7月24日に公表された「第6回液化石油ガス流通ワーキンググループ事務局提出資料」では、「三部料金制の徹底に向けた対応方針とその実効性確保(1)」の項目の中で以下のように法律・法令の改正方針を定めています。

引用

  ①ガス契約に係る料金は、基本料金、従量料金及び設備料金とし、消費者に対してこれらの料金を請求するときは、算定根拠を通知しなければならない

②設備料金として、配管及びガス器具等ガスを消費する場合に用いられるものの利用に係る料金以外を請求してはならない

③消費者とガスを消費する場合に用いられる器具が設置された建物の所有者とが異なる場合(たとえば賃貸集合住宅)において、消費者にガス料金を請求するときは、配管及びガス器具等ガスを消費する場合に用いられるものの利用に係る料金を請求してはならない

引用元:経済産業省「第6回液化石油ガス流通ワーキンググループ事務局提出資料」

これまでは不透明になりがちだった料金を「基本料金」「従量料金」「設備料金」の三部に分け、それぞれの料金設定を明確にする姿勢が盛り込まれています。

ここでいう設備料金は「配管・ガス器具等ガスを消費する場合に用いられるもの」に限定されるため、ビルトインコンロやインターネット設備などの導入料金は含まれていません。

あくまでガスに関わる費用のみがガス料金として請求されるようになりますので、入居者にとっては納得して料金を払えるようになると期待されています。  

なお、プロパンガスの料金に関わる法律は、当初2027年度の施行を目指した調整が進められていましたが、有識者会議で2年早い2025年度から上乗せを禁止する方針が了承されました。

現在、プロパンガス会社と契約しているオーナーは、施行までの間に契約条件の見直しを進めなければならないでしょう。

3)違反業者には罰則あり

プロパンガスの料金に関わる法律には、罰則が設けられる予定です。

立入検査や勧告を受けても改善されないプロパンガス会社には、30万円以下の罰金登録取り消しといった処罰が科されます。

該当の会社と契約していたオーナーに処罰が及ぶことはありませんが、急にガスが供給されなくなるといった事態に陥るリスクはありますので、契約している会社の動向は常に確認しておく必要があるでしょう。

2.法改正後に起きるオーナーへの影響

法改正が実際に行われ、プロパンガス料金の規制が始まった場合、賃貸物件のオーナーにはどのような影響があると考えられるでしょうか。

1)設備の導入費用を負担しなければならない

法改正によりプロパンガス料金に設備投資費用を上乗せできなくなると、プロパンガス会社からの無償貸与が無効となることが予想されます。

もしプロパンガス会社が無償貸与を停止した場合、すでに賃貸物件に組み込まれている設備は外せないため、オーナーが設備を買い取る必要があります。

すでに導入から一定期間は入居者が負担してきたため、費用全額を負担することはなさそうですが、それでも決して安くない費用を請求されることは十分考えられるでしょう。

また、原状回復における設備の入れ替え費用もオーナーが負担することになりますので、従来の賃貸経営とは方針を変える必要に迫られるのは間違いないでしょう。

2)家賃を見直す必要がある

これまでプロパンガス会社から各種設備を無償貸与されていたため、家賃を割安に設定していたオーナーも多いのではないでしょうか。

しかし、各種設備の無償貸与サービスを受けられなくなると、多くのオーナーは設備投資の費用を賄うために家賃を見直さなければならなくなるでしょう。

元々設備の費用負担がない分を家賃から引いていたオーナーは、相場よりも安い家賃を売りにした入居者集めが今後できなくなります。

そのため地域の家賃競争に巻き込まれやすくなり、思うような賃貸経営ができなくなるかもしれません。  

また、既存の入居者の家賃も見直す必要があるため、値上げ幅によっては退去されるリスクも少なからず発生するでしょう。

プロパンガススキームを禁止する法律が施行されるまでの間で、オーナーは適正な家賃設定の検討が求められます。

3)プロパンガスを避けていた入居希望者を集めやすくなる

プロパンガススキームによる設備の無償貸与・提供がなくなるのは大きなダメージになりますが、一方で賃貸経営の観点におけるメリットも存在します。

プロパンガスは都市ガスに比べて料金が高く、価格設定が不透明であるという認識は一般の消費者にも広まっています。

家賃が安くてもプロパンガスであることを理由に物件を避けることも考えられるため、これまで入居者集めに苦戦していたオーナーも多いのではないでしょうか。

  今後、法改正によりガス料金が透明化されれば、少なくとも「何に対してガス料金を支払っているのかわからない」といった入居者の不満は無くなっていくでしょう。

すでに入居している既存の住民は、設備投資費用の回収のために家賃が値上げされたとしても、同時にガス代が下がります。

トータルの出費は大きく変わらないかもしれませんが、不透明な理由で請求されていた出費がなくなる分、ストレスなく支払いを続けられるようになるでしょう。

プロパンガス料金の請求額が透明化された結果、入居者が増え住民が退去しにくくなり、結果として賃貸経の好転が期待できるかもしれません。

まとめ

2027年度に施行が予定されている「プロパンガススキームの禁止」に関する法律により、高額で不透明とされていたプロパンガスの料金が改正される見込みです。

プロパンガス会社と契約し、設備の無償貸与を受けられなくなるオーナーは、設備の買取や家賃の見直しといった対応を求められるようになります。

プロパンガスを導入しているオーナーにとって負担が増える一方、入居者側はプロパンガス料金が下がるため、所有物件が選ばれやすくなるというメリットがあります。

これまで部屋選びの際に、プロパンガスを避けていた人の選択肢に入ることが期待され、集客に苦戦していたオーナーにとっても追い風になる可能性があります。

オーナーは法律が施行されるまでの間に、新規・既存の入居者が共に満足できる物件作りを進めておきましょう。

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監修者
吉田 佳祐【株式会社ランドネット】
吉田 佳祐【株式会社ランドネット】
賃貸仲介と管理の両方を知る在籍10年超のベテラン!入居中のトラブルや滞納のお悩みなどあらゆる難題に手腕を発揮。【資格】宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・損害保険募集人一般【不動産業界歴】15年

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