アパート(一棟物件)の大規模修繕にどう備える?費用や周期を解説
原状回復

賃貸アパートを経営するオーナーは資産価値や物件の安全性を維持するため、定期的に大規模修繕を行う必要があります。
しかし、大規模修繕には多額の費用が必要になるため、資金の確保や実施時期に悩むオーナーも少なくありません。
では、アパートの大規模修繕はどの程度の周期で行う必要があり、どれくらいの費用がかかるものなのでしょうか。
本記事では、アパートの大規模修繕に必要な費用と周期を解説します。
目次
1.アパートの大規模修繕の内容
アパートの資産価値や安全性を維持するために必要な大規模修繕は、主に以下の工事が対象とされています。
・外壁塗装と補修
・屋根塗装と補修
・屋根、ベランダ、バルコニーなどの防水工事
・給湯器や給水ポンプの交換
・経年劣化した設備の交換
上記の他、修理や交換が必要な箇所への対応が追加されます。
大規模修繕は、数年周期で修理・交換を行い、修繕が始まると数日~数週間といった長い実施期間を必要とします。
また、規模の大きさに比例して必要な費用も大きくなるため、オーナーは修繕資金の積立といった計画的な資金計画を立てることが望まれます。
1)大規模修繕の効果
アパートの大規模修繕は資産価値や安全性の維持を目的としていますが、実際にそれだけの効果は望めるのでしょうか。
国土交通省住宅局が公表した「民間賃貸住宅の大規模修繕等に対する意識の向上に関する調査検討報告書」では、修繕の実施効果について以下の統計が発表されました。
(2017年3月)長期修繕計画に基づく修繕を行ったオーナーのうち、自主管理では43.3%、委託管理では38.5%が入居率の改善に奏功したと実感し、それぞれ4割以上が家賃水準の維持にも成功しています。
また、周辺物件に対する競争率の向上や融資を受けやすくなった効果、節税といった副次的な効果を実感しているという声もありました。
これらの結果から、アパート経営において大規模修繕は大きなメリットがあることが推察されます。
2.アパートの大規模修繕を行う周期
大規模修繕は高額なコストがかかります。
また、頻繁に行う必要はありません。
一般的には、建物や該当設備の劣化タイミングを基に策定した長期修繕計画に従って行われますが、具体的にどの程度の周期で行われるのでしょうか。
大規模修繕は同じタイミングで全ての項目を修繕・交換するわけではなく、箇所ごとに修繕の周期が異なります。
アパートの大規模修繕は、おおよそ以下の築後年数で行われます。
5年ごと | ベランダ・廊下・手すりの鉄部塗装・防水処理、給排水管の高圧洗浄 |
10年ごと | 外壁の塗装・防水処理、屋根の塗装・葺き替え・防水処理、土台の防蟻処理、給水ポンプの交換 |
11~15年 | 給湯器・エアコン・浴室設備・キッチンの交換 |
30年以上 | 給排水管・貯水槽・エレベーターの交換 |
大規模修繕時に行われる修繕の項目は、アパートの構造や規模によって異なります。
低層木造は他の構造に比べて低額で済みますが、高層のRC造では設置されている設備が高額かつ大規模なものになるため、修繕費用も高額になるでしょう。
特に、貯水槽やエレベーターといった設備の交換費用は、他に比べて高いコストがかかるため、オーナーは築後30年に向けた修繕費用の確保を進める必要があります。
3.アパートの大規模修繕に必要な費用
アパートはおおよそ5年~10年周期で何らかの修繕が行われますが、どの程度の費用がかかるのでしょうか。
国土交通省が公表する「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」を参考にみてみましょう。
1)木造10戸の大規模修繕費用
木造10戸のアパートの間取りが1K、1LDK・2LDKの場合、大規模修繕費のイメージは以下の通りです。
出展:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」
木造10戸のアパートの場合、1Kなら30年で約1,740万円、1LDK以上なら約2,160万円の修繕費用が必要です。
戸数に差はありませんが、間取りの広さにともない建物の大きさが変わるため、1LDK以上のアパートの方が修繕費用は高額になります。
また11~15年目、21~25年目には屋根・外壁の再塗装や設備の交換が発生するため、他のタイミングよりも費用が必要になる点には注意が必要です。
2)RC造10~20戸の大規模修繕費用
RC造アパートの間取りが10戸1K、20戸1LDK・2LDKの場合、大規模修繕費のイメージは以下の通りです。
出展:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」
RC造のアパートの場合、10戸1Kなら30年で約1,770万円、20戸1LDK以上なら約4,490万円の修繕費用が必要という試算となりました。
10戸1Kの場合、木造とRC造では大きな差はありません。
一方で、戸数が倍増した20戸1LDK以上では、戸数あたりの修繕費用は木造と大きな差はなかったものの、戸数に比例して総額も倍増する結果となりました。
戸数が多いアパートは家賃収入も高額になりますが、建物の規模に合わせた修繕費用を積み立てておく必要があるでしょう。
なお、この試算では築後30年以降に必要になるであろう給排水管・貯水槽・エレベーターの交換費用は含まれていません。
これらの設備が設置されている物件のオーナーは、さらに数百万円の修繕費用を見込んでおく必要があるでしょう。
4.大規模修繕の資金の確保方法
大規模修繕費用は、アパートの規模が小さくても合計で1,000万円を超える資金が必要です。
必要なタイミングで適切な修繕を行うために、各オーナーはどのような方法で資金を確保しているのでしょうか。
国土交通省住宅局「民間賃貸住宅の大規模修繕等に対する意識の向上に関する調査検討報告書」によれば、修繕を実施しているオーナーの資金確保状況は以下の通りとなりました。
確保している | 確保していない | |||||
積み立てている | 管理会社等に積み立てさせている | 管理会社等が積み立てている | 工事の際に借り入れる | 手持ちの資金で対応する | 考えていない | |
全体 | 61.1% | 15.6% | 6.6% | 3.5% | 9.3% | 3.9% |
個人家主(自主管理) | 68.3% | 7.7% | 4.8% | 1.9% | 10.6% | 6.7% |
個人家主(委託管理) | 59.8% | 20.5% | 6.8% | 4.3% | 8.5% | 0.0% |
個人家主(サブリース) | 40.0% | 20.0% | 15.0% | 5.0% | 10.0% | 10.0% |
法人家主 | 50.0% | 25.0% | 6.3% | 6.3% | 6.3% | 6.3% |
出展:国土交通省住宅局「民間賃貸住宅の大規模修繕等に対する意識の向上に関する調査検討報告書」
大規模修繕を実施しているオーナーの83.3%は何らかの形で修繕費用の積立をしています。
全ての区分においてオーナーが自主的に積み立てているケースが最も多いですが、委託管理やサブリースでは、管理会社に積立を委託しているケースも多いようです。
なお、意識して修繕費用を積み立てていないケースにおいても、修繕費用を調達する算段があるオーナーが多く、修繕を全く考えていないオーナーは3.9%に留まりました。
1)修繕費用を積み立てないのは経費に計上できないから
物件の資産価値や安全性を維持するために必要な大規模修繕ですが、なぜ約17%のオーナーはあらかじめ修繕費用を積み立てないのでしょうか。
オーナーによっては定期的に積み立てるだけの資金の余裕がないケースも考えられますが、多くのオーナーが積み立てない理由は「積立金を経費に計上できないから」であると考えられます。
会計のルール上、費用は例外を除き実際に発生した時にのみ計上できます。
オーナーが修繕費用を毎月積み立てているとしても修繕費用が発生しているわけではありませんので、積立金額を費用に計上できません。
修繕費を計上できるのは5~10年おきの大規模修繕のタイミングに限られますが、その間は積み立てた資金が拘束されるデメリットのみが発生しますので、事業規模が小さいオーナーほど積立を避けたくなるでしょう。
「賃貸住宅修繕共済」の積立金は経費計上可能
賃貸物件オーナーの修繕費積立をスムーズに行うための仕組みが誕生しました。
全国賃貸住宅修繕共済協同組合は業界初の試みとして、2023年5月に「賃貸住宅修繕共済」の販売を開始しました。
この共済を活用した場合、積立金を積み立てた年に費用として計上できるため、税金対策に悩むオーナーも修繕積立金を用意できるようになると期待されています。
まとめ
アパート経営を長く安定して続けるためには、5~10年おきに行われる大規模修繕への備えが重要です。
経年劣化した建物や設備を修繕・交換することで物件の価値を維持できますが、大規模修繕には多額の費用がかかるため、オーナーは資金を準備する必要があります。
トータルで数千万円かかる大規模修繕費用を無理なく用意するためにも、計画的な積立をおすすめします。
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オーナー様が長く安定した賃貸経営を行えるよう、長期修繕計画の策定から実行まで代行いたします。
大規模修繕に必要な資金の積立や修繕実施に不安があるオーナー様は、ぜひ一度ランドネットまでお気軽にご相談下さい。
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